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大阪家庭裁判所 昭和50年(家)420号 審判 1976年2月25日

本籍・住所 大阪市

申立人 瀬山虎一(仮名) 外二名

国籍 韓国 住所 大阪市

相手方 朴香順(仮名) 外二名

主文

別紙遺産目録記載の遺産は総て相手方らの共有取得とする。

相手方らは連帯して申立人瀬山虎一、同川瀬光夫にそれぞれ金一〇八、八五九、五七八円、申立人川瀬達子に金二七、二一四、八九四円及びこれらに対するいずれも本件審判確定の日以後年五分の割合による金員を各支払え。

審判(調停を含む)費用は各自の負担とする。

理由

1  本件申立の要旨は、被相続人尹高孫は韓国々籍を有し我が国に永住していたものであるが、昭和四六年七月二九日死亡したところ、申立人らはいずれも被相続人の死後同人の子として裁判上の認知を受けたものであるので、その遺産につき法律上適正な分割を求めたく申立に及んだ、と云うにある。

2  そこで当裁判所は家庭裁判所調査官の調査その他相当の証拠調をなしたうえ、次のとおり認定判断する。

3  被相続人尹高孫は、韓国籍を有する外国人であるが、我が国に永住して大阪市に住所を有し、同地で死亡したものであり、本件当事者らもいずれも我が国に住所を有するものであるので、本件遺産分割については、我が国に裁判権があり、当裁判所に管轄があると云うべく、又その準拠法については、法例第二五条により被相続人の本国法たる大韓民国民法(以下韓民と略称する)に拠ることとなる。

4  相続の開始

被相続人尹高孫は、昭和四六年七月二九日、大阪市○○区○○△丁目○番地を最後の住所地として死亡し、相続が開始した(韓民第九九七条第九九八条第九八一条)。

5  相続人及び相続分

相続人は、被相続人の妻である相手方朴香順、嫡出の男で戸主相続人たる相手方尹吉林、嫡出の女で既に他に婚し同一家籍内にない相手方尹秋子、及びいずれも被相続人死亡後認知の裁判が確定した非嫡男たる申立人瀬山虎一、同川瀬光夫、同一家籍にない非嫡女たる申立人川瀬達子で、その相続分は、相手方朴香順が一八分の二、同尹吉林が一八分の六、同尹秋子が一八分の一、申立人瀬山虎一、同川瀬光夫がそれぞれ一八分の四、同川瀬達子が一八分の一である(韓民第一〇〇〇条、第一〇〇三条、第一〇〇九条、第九八四条、第九八五条)。

6  遺産

被相続人の遺産については、その総てが相手方ら、殊に相手方尹吉林、同朴香順の占有・管理のもとにあるが、相手方らは本件遺産分割に極めて非協力的で、調停・審判段階を通じて当裁判所の数次に亘る呼出しにも自身らは全く出頭せず、相手方尹吉林代理人を通じての説得も効なく、遺産の内容をすら明らかにすることに一切応じなかつた。このような相手方らの頑なな態度は、被相続人と所謂婚外関係にあつた申立人らの母達及び申立人らに対する強い感情的反発と法への無理解に基因するものと云う他ないが、そのため遺産の全貌とその具体的内容は殆んど不明である。そこで必しも適切充分とは云い難いけれども、止むなく調査の結果に従い、以下の如く認定する。

不動産については少くとも別紙遺産目録I<省略>記載のものがあることが認められ、その固定資産課税台帳の昭和五〇年度価格は各々同記載のとおりであるから、これらの遺産不動産評価額は少くともこれを下らないものと云うことができる。そうするとその合計評価額(別紙目録<省略>Iの(2)ないし(4)については共有持分の評価額)は少くとも二八一、八八七、九〇〇円を下らない。

又株式及び出資、現金預貯金等、家庭用財産、退職金・功労金等並びにその他資産については、いずれもその具体的内容は明らかでないが、それぞれ少くとも別紙遺産目録<省略>2ないし6記載の価額を下らないものがあると推認される。そこでこれらを併せると遺産総額は、計四八九、八六八、一〇三円となる。

7  遺産分割

本件遺産については、相手方らにおいて未だ分割協議等は未了と認められるが、前記のとおり、本件遺産の総てが相手方らの占有・管理下にあり、かつその具体的内容の殆んどが不明であることに鑑み、本件遺産分割においては、現物分割の方法によることは不適切でもあり、困難でもあると云うべきであるから、別紙遺産目録<省略>記載の遺産は総て相手方らの共有取得とし、これに対し相手方らには債務負担による遺産分割の方法により、上記取得の代償として、申立人らに対しそれぞれその相続分に相応する金銭及びこれに対する審判確定の日以後年五分の割合による利息金を連帯して支払わせるのが相当である。そうすると、申立人瀬山虎一、同川瀬光夫に対する金額は前記遺産総額のそれぞれ一八分の四に相当する各金一〇八、八五九、五七八円、又申立人川瀬達子に対するそれは一八分の一に相当する金二七、二一四、八九四円、及びこれらに対する上記各利息金となる。

8  審判費用は各自の負担とするのが相当である。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 西岡宜兄)

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